ダイハツ ミゼットII について

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今から8年前に母が購入したダイハツ・ミゼットII。車検の期日が3月2日までと近付いていることと、新しい車を購入することもあり、今回手放すことになりました。ちょっと紆余曲折があったので書き記しておきたいと思います。

息子である僕が売却などの手配をしていたところ、ミゼットIIは中古車でもそこそこの人気車種ということもあり、すぐに買い取り業者が査定にやってきました。中古車販売サイトを見ても似たよううなコンディションのミゼットIIなら30~50万円くらいが相場のようです。四半世紀前の軽ワゴンですが、今じゃ新車で手に入らないジャンルの車ですので値段が安定しているようですね。売却の連絡をした翌日の朝には買い取り業者が査定にやって来ました。

買い取り査定と引き取り

実際に車を確認してもらうと、走行距離は約6.3万kmで査定額は20万円。市外にある業者の工場に持ち帰って詳しく調べ、内部も問題がなければこの金額でと買い取り業者の提案があり、その場で車両を引き渡しました。

買い取り業者の担当者が乗ってきた営業車を自宅駐車場に置いていき、担当者さんはミゼットIIを運転して工場まで帰っていきました。

走行距離の改竄が発覚

それから数時間後、買い取り業者から電話がかかってきました。

「走行距離メーターが改竄されている車両なので買い取れない」

手早く買い取ってもらって安心したところだったので、寝耳に水です。電話の話を聞いてみると、工場に着いて改めて車両情報を確認してみたところ、過去に業者オークションへの出品歴がある車両だったらしく、2011年5月時点で走行距離14.3万kmで掲載されていたとの説明を受けました。買い取りどころか廃車費用をもらわないといけない、と。

母が購入したのは2014年で、走行距離5万台kmの車両として35万円で購入したはず。実際、8年経った今でもメーターは6.3万kmを指しています。

急いで県外にある販売業者に連絡を取り、メールのやりとりを始めました。販売業者は8年前から変わらず営業をしており、Google マップでのレビューもそれほど悪くないお店です。大手ディーラーではなく一店舗だけの中古車販売店みたい。

裁判員裁判の関係で佐世保と長崎市を往復する生活のタイミングでしたが、ミゼットIIの車検期日が差し迫っている状況だったので移動中や宿泊先でもやりとりを続けました。

販売業者とのやりとり

状況を整理すると、

  1. 販売業者は改竄車と知らずに売った。
  2. うちの母は改竄車と知らずに買った。
  3. 買い取り業者は改竄車と知らずに持ち帰った。

という、登場人物全員が被害者という構図です。

では、最初に販売業者がこの車両を入荷した経緯はどうだったかというと、これは個人から買い取ったようです。今回の件が発覚して、販売業者側でも業者オークションを調査してもらったところ、たしかに買い取り業者が主張している走行距離での掲載履歴があることを確認してもらいました。

走行距離の改竄車については、「一般社団法人 日本中古自動車販売協会連合会」のサイトに次の記述がありました。

 メーター巻戻しの事実を知らないで自動車を買ったユーザーは、錯誤による取消し、販売店がメーター巻戻しを知っていてユーザーをだまして販売していた場合には詐欺による取消しを主張し、自動車を返して代金の支払いを免れることができます。そして、錯誤による取消し、詐欺であった場合の取消しをしたユーザーは、民法121条の2によって、代金の返還を請求する権利を取得すると共に、「相手方を原状に復させる義務」を負います。そのため、ユーザーは自動車を返還する必要があります。
 なお、「原状に復させる義務」として、ユーザーが自動車の返還のみならず、1年間車両を使用していたことによる使用料または使用によって減損した価値相当額の返還を要するか否かについては、この使用料などの返還を肯定する裁判例・判例もありますが、他方で「善意の占有者は、占有物から生じる果実を取得する」と定めた民法189条1項などの規定を根拠に返還義務を否定する裁判例も存在します。そのため、事案によってはユーザーに対する使用料などの返還請求が認められることもありえますが、ユーザーに対して使用料などの請求ができるか否かは慎重な検討が必要です。特に、錯誤取消や詐欺取消などの原状回復義務を定めた民法121条の2の規定には、受領時から利息や果実を返還する義務を定める規定がありませんので、極めて慎重な検討が必要となります。
 メーターの表示が過去の実際の走行距離と合致しているかどうかは通常人が容易に知り得ることではありません。
 このように、売買の対象となった特定物に(中古車は新車と異なり一物一価であることから、全く同じ程度の別な物を手に入れることはできませんので、原則として代替性はなく、したがってその売買は特定物売買にあたります)契約内容とは異なる欠陥、不具合があった場合に販売者側が負う責任を、「契約不適合責任」といいます。
 売買の対象となった特定物に不具合等があり、それによって契約をした目的を達成することができないとき等には、買主は契約を解除し代金の返還を売主に求めることができます(旧法:瑕疵担保責任)。
 メーターの巻戻しによって本当の走行距離が隠された自動車では、偽りのメーター数が表しているような性能、価値を持つことができません。またメーターの巻戻しに気が付かなかったユーザーに不注意があったということもできません。ですから、メーターの巻戻しが発見された場合には、買主は代金減額請求、契約解除・代金返還請求などができるのが原則といえます。
 自動車の売買契約に「錯誤」があった場合、錯誤に陥って契約した当事者は契約の取消しを主張することができます(民法95条)。錯誤とは、それがなかったら契約締結をしないのが通常であろうと考えられる程度の重要な契約内容についての思い違いのことをいいます。
 自動車の走行距離は性能、価値を表す重要な指標ですから、それについての思い違いは錯誤に当たるといって良いので、巻戻されたメーターの表示によってその自動車の実際の走行距離を思い違いしたユーザーは、契約の取消しを主張できることになります。

つまり今回の件は、少なくとも「うちの母と販売業者で取り交した売買契約」は無効であり、販売業者側に「契約不適合責任」が発生するようです。

販売業者にとっても災難だったろうなと同情しつつも、

  • 本件は販売業者側に「契約不適合責任」がある。
  • 販売業者が入荷時や販売時に走行距離を確認することを怠って販売した責任がある。

ということを、お互いに認識した上で

  • 契約から8年も経過している点。
  • その間にうちで数千km走っている点。(原状回復が不可能)

を差し引いて、購入価格の35万円まるまる返金を求めるのではなく、本来メーターどおりであった場合の査定額20万円で車両を引き取ってもらうことに落ち着きました。「契約の破棄は難しい」とのことだったので、販売業者に買い戻してもらう形です。

車両の買い戻し

さて、ここで問題になるのが車両の現在地です。

肝心のミゼットIIは買い取り業者の工場(市外)に置いてあり、買戻してくれる販売業者は県外です。販売業者がコストを負担してトレーラーで引き取りに来たいとのことですが、買い取り業者は1円にもならない改竄車をそのまま自社工場に置いておくメリットがありません。

それどころか「車両回送費用(実費の1万円程度)が本件で無駄になったので、お宅で立て替えてもらって販売業者に請求してください」と言われました。

これについては、

  • 車両を今すぐ持ち帰りたいとお願いしてきたのは買い取り業者であり、こちらは許可しただけ。
  • 出張査定をしている最中に本社と車両情報を電話連絡していたのに、走行距離についてまで確認をせずに持ち帰った担当者のミス。

があるため、こちらで対応する義務はないと考えていました。

ただ、担当者が乗ってきた営業車はまだうちの駐車場にありましたし、あまり話が捻じれても困るので「手切れ金」として支払うことも考えました。結局この回送費用については撤回され、請求されませんでした。

うちに悪意はなかったものの、買い取り業者に迷惑をかけたのは事実ですし心情も理解できますので、御礼の手紙と菓子折りを送っておきましたが…誰かの悪意のためにみんなが不幸になった気分で最悪です。

買い取り業者にまたうちの駐車場までミゼットIIを返してもらい、販売業者がうちの駐車場まで引き取りに来ることになりました。

まとめ

結果的に、

  • 販売業者は改竄車と分かっている車両を20万円で購入して引き取り。
  • 僕は各所への電話やメール連絡などで時間も手間もかけて調整。
  • 買い取り業者は出張査定や回送などのコストを被る。

という…三者とも被害者になった訳です。

販売業者がミゼットIIを買い取る(または母に売る)前に確認さえしておいてくれればこの件は起きなかったはず…と悔やまれます。販売業者がこの三者のスコープで考えると元凶には変わりないんですが、長い車両の売買歴の中で入ってしまった誰かの悪意の被害者とも言えます。

いずれにせよ、業者と業者の間に挟まれた我が家のような一般人に大きな経済的な損失をさせなかった二つの業者さんの対応は誠意を感じられました。

「メーター巻き戻し」の中古車なんて、話では聞いていましたがまさか我が家の車がそうだったなんて考えたこともなく、いい勉強になりましたね。

佐世保のシステムエンジニアです。詳しいプロフィールやこのブログについてはこちらをご覧ください。

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